グリザイユ、カマイユとは?

グリザイユ、カマイユとは?

グリザイユはフランス語で「灰色」、カマイユは「モノクローム」を意味し以前はカメオと同義語でした。グリザイユがブラックからホワイトまでのグレーの色相の濃淡を作っていくのに対し、カマイユはブラウン系の深い色からホワイトまでのグラデーションを使います。明暗、物の形、構成をハッキリさせるために絵を描く最初の段階で施される技法を言います。

『聖アントニウスの誘惑(外翼)』
ヒエロニムス・ボス
国立古美術館(ポルトガル・リスボン)
1505-1506年
TriptychOfTemptationOfStAnthony-Hieronymus Bosch

グリザイユとカマイユの技法

ブラックとホワイトの中間の色であるグレーの下地、あるいはブラウンとホワイトの中間色を画面全体に彩色した後、ホワイトを使って形を描きき起こし、陰になる部分を作り画面を引き締めることで色彩を上に乗せた時に空気間や立体感が感じられるように土台から作っていきます。

グリザイユとカマイユの絵具

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Kunie
作家によって使う絵の具は異なりますが、いつも下記の絵具を使っています。

グリザイユの絵具

ミネラルブラック、ペイニーズグレイ、 ブルイッシュグレイ2、シルバーホワイト、チタニウムホワイト

カマイユの絵具

ナチュラルバーントアンバー、ブラウンピンク、シルバーホワイト、チタニウムホワイト

グリザイユとカマイユで描かれた作品

ルネッサンス時代、芸術家はしばしばグリザイユを使用しました。この技法は、明暗の劇的な効果と立体感を際立たせるためこの時代の作品を、より研ぎ澄まされたものとしました。
ジョットは、スクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画(パドヴァ 1304 年頃)を、ヤン・ファン・エイクは、ゲントの祭壇画(ベルギー 1432年)をグリザイユを使って描いたと言われています。

ゲントの祭壇画 ヤン・ファン・エイク

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Jan van Eyck –  Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4484562
『ゲントの祭壇画』
ヤン・ファン・エイクJan van Eyck
聖バーフ大聖堂(ベルギー)1432年
12枚のパネルで構成される見事な作品は、フランドルの画家フーベルト・ファン・エイクによってデザインされ手掛けられました。しかし、彼は製作途中の1426年に死去してしまいます。その後、フーベルトの弟であるヤン・ファン・エイクは未完成だった『ヘントの祭壇画』の大部分を描き上げて、1430年から1432年にかけて完成させたました。

ヘロデの前の東方三博士

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By Unknown artist – Jastrow (2006), Public Domain,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1043236
『ヘロデの前の東方三博士』作者不明
クリュニー美術館(フランス)
15世紀初頭
ステンドグラスは、光を通す部分と通さない部分を明確に分けて構成して行くのでグリザイユが最初に施されています。作品の内容は『マタイによる福音書の2章』にしるされている記事です。博士たちが「ユダヤ人の王」として生まれた方が星の位置からベツレヘムにいらっしゃると知り、探し当てるためヘロデ王の王宮を訪問した際の様子です。

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受胎告知 ヴァン・ダイク

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By Jan van Eyck – The Yorck Project (2002)  Publishing GmbH. ISBN: 3936122202., Public Domain,
『受胎告知』
ヴァン・ダイクJan van Eyck
1439年
まるで、彫刻のように見えますがパネルの上にテンペラと油彩で描き起こされたものと思われます。このような、しっかりとした下地があってこそバン・ダイクの素晴らしい作品が生まれるのだと改めて思いました。内容は『ルカによる福音書1章』の記事です。乙女であったマリアのもとに、ある日天使ガブリエルが現れ、聖霊によって身籠ったことを知らせます。聖書を読んでいたマリアがふと目を上げたところに、鳩として描かれた聖霊が舞い降りてきた瞬間が描かれています。

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バプテスマのヨハネ アンドレア・デル・サルト

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By Andrea del Sarto – Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6004074
『バプテスマのヨハネ』
アンドレア・デル・サルト Andrea del Sarto
1511-1526年
イエス・キリストがバプテスマのヨハネによって洗礼を授けられる場面が主題になっています。

グリザイユとカマイユまとめ

①下地を最も明るい色から暗い色まで、階調化した下地を作ってから彩色する技法です。
②この技法により、空気感、立体感、明暗を最初に作ることが出来ます。
③グリザイユはブラックからホワイトまで、カマイユは暗めのブラウンからホワイトまでのグラデーションを用いて作ります。