受胎告知の絵画21点と描かれたシンボルを聖書と共に「フラ・アンジェリコ」「ダビンチ」「ボッティチェリ」

受胎告知(Annunciation)とは

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ルカ
『受胎告知』の絵画は、マリアのもとに天使ガブリエルが現れ、神の子を身ごもったことを知らせる場面が描かれたもので、数々の名画が遺されています。最初に聖書個所から見ていきましょう。

ルカの福音書 1章 26〜35節

さて、その六か月目に、御使いガブリエルが神から遣わされて、ガリラヤのナザレという町の一人の処女のところに来た。
この処女は、ダビデの家系のヨセフという人のいいなずけで、名をマリアといった。
御使いは入って来ると、マリアに言った。

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ガブリエル
おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおられます。
しかし、マリアはこのことばにひどく戸惑って、これはいったい何のあいさつかと考え込んだ。
すると、御使いは彼女に言った。
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ガブリエル
恐れることはありません、マリア。あなたは神から恵みを受けたのです。
見なさい。あなたは身ごもって、男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。
その子は大いなる者となり、いと高き方の子と呼ばれます。また神である主は、彼にその父ダビデの王位をお与えになります。
彼はとこしえにヤコブの家を治め、その支配に終わりはありません。

マリアは御使いに言った。
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マリア
どうしてそのようなことが起こるのでしょう。
私は男の人を知りませんのに。
御使いは彼女に答えた。
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ガブリエル
聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます。それゆえ、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれます。
見なさい。あなたの親類のエリサベツ、あの人もあの年になって男の子を宿しています。不妊と言われていた人なのに、今はもう六か月です。
神にとって不可能なことは何もありません。
マリアは言った。
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マリア
ご覧ください。私は主のはしためです。
どうぞ、あなたのおことばどおり、この身になりますように。
すると、御使いは彼女から去って行った。
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『受胎告知』フラ・アンジェリコの作品

金色の言葉

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『受胎告知』フラ・アンジェリコ Fra Angelico
ディオチェザーノ美術館(コルトーナ) 1433-1434年
Fra_Angelico

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ルカ
フラ・アンジェリコの受胎告知は静謐な画面が魅力です。天使ガブリエルの言葉は金色の文字で描かれ、羽と光輪は装飾的な金箔で表現されています。左上にはアダムとエバの失楽園が描かれ、アダムによってこの世界に罪が入りイエス・キリストによって罪からの解放がもたらされるという聖書の約束が、マリアの聖霊による身ごもりにより動き出したことが表されています。
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グレース
聖霊によって神様の子供が宿るなんて、とても不思議。。。
戸惑いながらも、素直に受け入れているマリアさんの信仰も凄いですよね。
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ルカ
本当に。。。神様は不思議なお方ですね。

『受胎告知』シモーネ・マルティーニの作品

黄金背景の装飾

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『受胎告知』シモーネ・マルティーニ Simone Martini
ウフィツィ美術館 1333年頃
出典:Wikimedia Commons
シモーネ・マルティーニの『受胎告知』は、シエナ大聖堂内の礼拝堂のために描かれたもので、「テンペラ」で描かれています。背景は金箔で豪華に仕上げられ、この場面を神々しく装飾しています。マリアの表情からは、この出来事とみ使いの言葉を聞いてにわかに信じがたい緊張感が伝わってきます。

『受胎告知』ヤン・ファン・アイクの作品

教会の中に描かれたマリア

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『受胎告知』ヤン・ファン・アイクJan van Eyck
国立美術館(ワシントンDC)1434-1436年頃
出典:Wikimedia Commons
受胎告知を受けるマリアは教会の内部で、聖書を読む形でしばしば描かれました。
読んでいた個所は『イザヤ書 7章 14節 それゆえ、主は自ら、あなたがたに一つのしるしを与えられる。見よ、処女が身ごもっている。そして男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶ。』救い主誕生の預言の個所として理解されています。
大天使ガブリエルは神からの挨拶を捧げます『Ave gratia plena (おめでとう、恵まれた方。)』。彼の言葉は金色の文字でマリアに向かって流れます。マリアは驚きつつも謙虚な心で、神の子を産むために選ばれたことを受け入れます。受け入れを表現した言葉『ecci ancilla domini(ご覧ください。私は主のはしためです。)』は神に見えるように逆に書かれました。

『受胎告知』フィリッポ・リッピの作品

”鳩”として描かれた聖霊

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『受胎告知』フィリッポ・リッピ
アルテピナコテーク(バイエルン州)1443年頃
出典:Wikimedia Commons
画面左上に”父なる神”と天使たちの姿があり、”鳩”として描かれた聖霊をマリアに送っています。マリアの居る教会内部から、向こう側に庭が見えて外の景色が描かれています。

『受胎告知』バルテルミー・デイクの作品

光の中の小さなイエス

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『受胎告知』バルテルミー・デイク Barthélemyd ‘Eyck
エグリーズデラマドレーヌ 1443-1444年
出典:Wikimedia Commons
左上に父なる神と、天使たちが見え、父なる神の手から発せられる光に乗って、小さな子供としてのイエス・キリストがマリアに向かって飛んでいます。

『受胎告知』フランチェスコデルコッサ

 緻密に描かれた建物

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『受胎告知』フランチェスコデルコッサ Francesco del Cossa
ドレスデン美術館 1470-1472年
出典:Wikimedia Commons
素材や質感の違いが伝わってくるほど緻密に描かれた建物、天使の羽も実際に存在する鳥を観察して丁寧に描き出され、リアリティあふれる受胎告知に仕上がっています。

受胎告知』レオナルド・ダ・ビンチの作品

閉じられた庭

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『受胎告知』レオナルド・ダ・ビンチLeonardo da Vinci
ウフィツィ美術館 1472年頃
出典:Wikimedia Commons
レオナルド・ダビンチと師である、ヴェロッキオの共同制作といわれている作品。ルネッサンス時代の建物の前庭に、天使が訪れる形で描かれています。閉じられた庭は聖書の中で乙女を表現する言葉でマリアの純潔を表しています。

『受胎告知』ペルジーノの作品

空間に現れた円形の天

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『受胎告知』ペルジーノPietro Perugino
サンタマリア・ヌオーヴァ教会 1489年
出典:Wikimedia Commons
中央上に異なる空間が開け、父なる神の周りに円形に天使たちが配置されています。建物の向こう側には美しいイタリアの景色が丁寧に描かれています。

『受胎告知』ボッティチェリの作品

優美な仕草

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『受胎告知』ボッティチェリBotticelli
ウフィツィ美術館 1489〜1490年
出典:Wikimedia Commons
圧倒的な美しさのマリアの優雅な仕草が印象的です。指の先まで神経が行きわたり困惑しつつも告げられた内容をしっかりと受け止めています。天使の衣の裾から⇒手⇒マリアの手⇒聖書へと対角線上に視線が流れていく構図も素晴らしいです。

『受胎告知』ジョバンニ・ベッリーニの作品

百合の花と共に

blank『受胎告知』ジョバンニ・ベッリーニ Giovanni Bellini
アカデミア美術館(ベネツィア)1500年頃
出典: Wikimedia Commons
丁寧に描かれた大理石の壁と、窓から差し込む光が美しく神の遣いであるガブリエルを後ろから照らし出しています。マリアの思索的な表情、静かに受け止める様子が印象的です。ほかの作品にも用いられている、百合の花はマリアの純潔を表現しています。

『受胎告知』ハンスホルバインの作品

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『受胎告知』ハンスホルバインHans Holbein
バイエルン州絵画コレクション 1502年
出典: Wikimedia Commons
リアルな描写で、金の装飾大理石の柱などが描かれています。ガブリエルが手にしている金の棒と言葉が十字架の形にクロスしているところが興味深いです。

『受胎告知』ヤン・デ・ビールの作品

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『受胎告知』ヤン・デ・ビール Jan de Beer
ティッセンボルネミッサ美術館(マドリード)
1520年
出典:Wikimedia Commons
聖書の言葉が流れる紙の上に、巻物のように表現されています。窓の向こう側には、この後の出来事であるエリザベトを訪問する場面が描かれ、時間の流れが一つの絵の中に集約されています。

『受胎告知』ティントレットの作品

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『受胎告知』ティントレット Jacopo Tintoretto
スクオラ・グランデ・ディ・サンロッコ(ベネツィア)
1582-1584年
出典:Wikimedia Commons
体格の良いしっかりとした腕を持つガブリエルが、後ろに大勢の天使たちを引き連れ、突如マリアのもとに現れています。外には許嫁のヨセフがマリアと結婚後に住む予定の家を建てている様子が見えます。

『受胎告知』エル・グレコの作品

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『受胎告知』エル・グレコEl GRECO
大原美術館 1590-1603年頃
出典:Wikimedia Commons
暗闇の中に突然、稲妻のような光を放ちながら、雲に乗ったガブリエルが現れます。劇的な場面設定と筆の勢いが、この出来事を力強く表現しています。

『受胎告知』オラツィオ・ジェンティレスキの作品

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『受胎告知』オラツィオ・ジェンティレスキ
Orazio Gentileschi
サバウダ美術館(トリノ)1623年
出典:Wikimedia Commons
オラツィオ・ジェンティレスキの『受胎告知』は、気品があり無垢な印象のマリアが少し下向き加減の表情で、謙遜にガブリエルから伝えられたことを受け入れる様子が魅力です。頭部には金色の布を巻き付け、マリアを描くときの伝統的な配色である赤いドレスと青い葉織物を着ています。強い明暗は、ローマ滞在中にカラバッジョから影響を受けたといわれています。

『受胎告知』ルーベンスの作品

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『受胎告知』ルーベンス Peter Paul Rubens
ルーベンス・ハイス(アントワープ)
1608-1628年
出典:Wikimedia Commons
今、舞い降りてきたような動きのある天使が特徴的です。見上げるマリアの首をねじった姿勢が美しく、驚きが伝わってきます。受胎告知は百合が描かれることが多いのですが、花瓶にはいろいろな種類の花が活けてあり、祝福する天使もマリアに向かってバラの花を蒔いています。

『受胎告知』グイド・レーニの作品

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『受胎告知』グイド・レーニ Guido Reni
ルーブル美術館 1629年
出典: Wikimedia Commons
画面上に描かれた天の空間には、様々な年齢に見える天使たちが黄色を基調とし描かれているのに対し、地上は青を中心とした寒色で描かれており、地上の出来事と天上での見守りを、色彩で対比させています。胸元で手を合わせるマリアと、天を指すガブリエルの仕草が美しいです。

『受胎告知』ムリーリョの作品

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『受胎告知』ムリーリョ Murillo
エルミタージュ美術館 1655-1660年
出典: Wikimedia Commons
画面の半分が天の軍勢と雲で覆われています。ガブリエルは少年のような顔立ちで、赤ちゃんに羽が生えた形で描かれている天使たちは、二人のやり取りを興味深そうに、または応援するように見下ろしています。マリアの胸元で手をクロスするポーズは謙遜にこの出来事を受け止めているポーズとして伝統的に描かれてきた形です。

『受胎告知』ロッセティの作品

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『受胎告知』ロッセティ Rossetti
テートブリテン(ロンドン)1850年
出典:Wikimedia Commons
ロセッティの『受胎告知』は妹のメアリーをモデルに描かれました。乙女の象徴としての白い色で構成され、伝統的にマリアの衣装として用いられてきた青と赤の色彩を、マリアの背景と手前の飾りとして補うことで画面を引き締めています。ベッドの上に座っているマリアや、ガブリエルに翼が描かれておらず、足元に炎が描かれ宙に浮いているなど、日常の中の非日常の表現が面白いです。

『受胎告知』ヘンリー・オサワ・タナーの作品

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『受胎告知』ヘンリー・オサワ・タナーHenry Ossawa Tanner
フィラデルフィア美術館 1898年
出典:Wikimedia Commons
ベッドにいるごく普通の若い女性として描かれたマリアと、部屋に差し込んだ閃光として描かれたガブリエルがごく日常の中で起こった出来事のようでありながらも、映画のワンシーンのような不思議な印象に仕上がっています。

『受胎告知』ウォーターハウスの作品

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『受胎告知』ウォーターハウス John William Waterhouse
個人蔵 1914年
出典:Wikimedia Commons
受胎告知の時期が春であると解釈されることが多いことから、庭にバラなどの春の花が描かれています。ガブリエルの衣装は白で描かれることが多かったのですが、紫よりののピンクで描かれ羽は青く、風にたなびく髪は美しいです。

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『受胎告知』ガブリエル修道院アブカシャバ
ديفيدعادلوهبةخليل2

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グレース
美しい受胎告知の作品をたっぷり見て、大満足です✨✨
私もマリア様のような清らかな女性を目指そうと思いました。

※聖書箇所はすべて新改訳2017を使用しています。