洗礼者ヨハネとは
絵画の中で度々登場する『洗礼者ヨハネ』とはどのような人物だったのでしょうか。
3回に分けて聖書個所と作品についてご紹介いたします。
洗礼者ヨハネを身籠る
ルカの福音書 1章 5〜24節まとめ
洗礼者ヨハネの父はザカリアという祭司で、妻のエリサベツはイエスの母マリアの親せきでした。二人は子供に恵まれず、年齢的にも難しく思える時期になっていたため、授かることをあきらめていました。
ある日ザカリアが神殿で香をたく仕事をしている時に、天使が突然現れました。そして恐怖に怯えるザカリアにこう語り掛けます。
その子はあなたにとって、あふれるばかりの喜びとなり、多くの人もその誕生を喜びます。その子は主の御前に大いなる者となるからです。
彼はぶどう酒や強い酒を決して飲まず、まだ母の胎にいるときから聖霊に満たされ、イスラエルの子らの多くを、彼らの神である主に立ち返らせます。
彼は※エリヤの霊と力で、主に先立って歩みます。父たちの心を子どもたちに向けさせ、不従順な者たちを義人の思いに立ち返らせて、主のために、整えられた民を用意します。
※旧約聖書に書かれている預言者の一人
ザカリアは答えます。
見なさい。これらのことが起こる日まで、あなたは口がきけなくなり、話せなくなります。その時が来れば実現する私のことばを、あなたが信じなかったからです。
ゼカリヤへの天使の告知
ドメニコ・ギルランダイオ
トルナブオーニ礼拝堂(フィレンツェ)
1485年-1490年
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ゼカリヤのもとへ天使ガブリエルが現れる聖書のエピソード、壮大なルネサンス教会の建築の中に描かれています。フィレンツェ市内で最も完成度の高く、保存状態の良いフレスコ画といわれています。
作者のギルランダイオは、兄弟のダビデとベネデット、義理の弟のセバスティアーノマイナルディ、そしておそらく若い頃のミケランジェロの協力を得て、1485年から1490年までフレスコ画制作に取り組みました。
当時のフィレンツェの著名人が画面の中に描かれ、この出来事に居合わせています。右側中央よりには依頼者の親族が描かれ、その後ろには、ギルランダイオの自画像があります(右から2番目)その右側の長い髪の若者は彼の息子または兄弟と言われています。
洗礼者ヨハネがお腹で踊る
ルカの福音書 1章 26〜56節より
エリサベツが妊娠して6か月が経った頃、イエスの母マリアのところにガブリエルは現れ、聖霊によって身籠ったことを知らせます。また、親戚のエリサベツが高齢にもかかわらず妊娠していることについても話します。
マリアは、山地にあるユダの町に急いで行きました。そしてザカリヤの家に行って、エリサベツに挨拶をしたところ、エリサベツの子供がお腹で踊ったのです。聖霊に満たされたエリサベツは、大声で叫びました。
あなたのあいさつの声が私の耳に入った、ちょうどそのとき、私の胎内で子どもが喜んで躍りました。主によって語られたことは必ず実現すると信じた人は、幸いです。
エリサベツを訪問するマリア
ドメニコ・ギルランダイオ
トルナブオーニ礼拝堂(フィレンツェ)
1486-1490年
エリサベツを訪問するマリアが描かれています。画面右側の3人の女性のグループには、この時代の人物の肖像が含まれています。最初の横顔の女性は、ジョバンニ・トルナブオーニの息子ロレンツォと結婚したジョバンナデリアルビッツィであると言われています。
背景には空想による街並みが描かれていますが、フィレンツェのヴェッキオ宮殿の塔、サンタマリアノヴェッラの鐘楼とローマのコロッセオは、実際の建物の形を描いています。
洗礼者ヨハネの誕生
ルカの福音書 1章 57〜58節より
月が満ちて、エリサベツは男の子を産みました。
近所の人たちや親せきは、この喜ばしい知らせを聞き神様を褒めたたえます。
洗礼者ヨハネの誕生
ドメニコ・ギルランダイオ
トルブオーニ礼拝堂(フィレンツェ)
1486-1490年
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ギルランダイオの時代の寝室に、落ち着いき、ゆったりとした姿勢のエリサベツ。洗礼者ヨハネを出産した直後の寝室の様子が描かれています。手前には、助産婦と乳母が生まれたばかりの洗礼者ヨハネのお世話をしています。同じく前景に、3人の女性がエリサベツを訪れています。最初の、豪華な服装の女性は、トルナブオーニの親戚かもしれません。フルーツバスケット頭に抱えてを右から入るメイドはボッティチェリのプリマベーラを参考に描かれたと言われています。
ヨハネの名を書くザカリア
ドメニコ・ギルランダイオ
トルブオーニ礼拝堂(フィレンツェ)
1486-1490年
ルカの福音書 1章 59〜80節より
生まれてから8日になり、儀式と命名のために集まった人々は父親の名前から”ザカリア”と名付けようとしましたが、エリサベツは
その瞬間、彼の口が開かれ話ができるようになり神様を褒めたたえました。
近所の人々は、大変驚きこの出来事がユダヤの山全体に語り伝えられました。
ザカリヤは聖霊に満たされて預言しました。
救いの角を私たちのために、しもべダビデの家に立てられた。
古くから、その聖なる預言者たちの口を通して語られたとおりに。
この救いは、私たちの敵からの、私たちを憎むすべての者の手からの救いである。
主は私たちの父祖たちにあわれみを施し、ご自分の聖なる契約を覚えておられた。
私たちの父アブラハムに誓われた誓いを。
主は私たちを敵の手から救い出し、恐れなく主に仕えるようにしてくださる。
私たちのすべての日々において、 主の御前で、敬虔に、 正しく。
幼子よ、あなたこそいと高き方の預言者と呼ばれる。主の御前を先立って行き、その道を備え、
罪の赦しによる救いについて、神の民に、知識を与えるからである。
これは私たちの神の深いあわれみによる。そのあわれみにより、曙の光が、いと高き所から私たちに訪れ、暗闇と死の陰に住んでいた者たちを照らし、私たちの足を平和の道に導く。
ヨハネは成長し、その霊は強くなり、イスラエルの人々の前に公に現れる日まで荒野で生活しました。
洗礼者ヨハネの誕生 まとめ
- 高齢で子供を諦めていた、ザカリアのもとにガブリエルが現れエリサベツが懐妊し男の子を生むことを告げました。
- ザカリアが、信じなかったため口がきけなくなります。
- エリサベツが妊娠し出産します。
- 男の子の命名について、神様からの導きに従ったところザカリアの口が開かれ、神様を褒めたたえ 預言しました。
出典:Wikimedia Commons
聖書箇所はすべて新改訳2017を使用しています。